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  流転、回帰、そして。
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雨に濡れた身体を回復させるため、私達は深く眠るつもりだった。
だが風に靡く木の葉の衣擦れが如き、小さな何か。
積み重なったそれは耳に届き、やがて意識を呼び起こすに充分な程の音となっていた。

光る目

 「……ドラゴンに関する多くの記述。やっぱりここは『ブレイズ』に関する場所だったのね」
 「教会、と言うよりも広告塔だね。英雄の名前を盾にしながら布教するのは賢いやり方とは思うけど、利用される側は堪ったものじゃないよ」
青年と乙女、二人で石机の上に広げられた書籍や紙切れやらを眺めながら、呟く。
 「さしずめ、拠点兼広告塔って所かしらね。帝国の膝元でよく建てる気になったものだわ」
 「表向きは英雄を称えるための場所だからね。生き残るためにはなんだって利用するくらい必死なんだよ」
青年の言葉に、乙女は肩を竦めて返す。
心底「厭きれた」とでもいうかのように。

 「ふわぁ~あ……」
お姫様の覚醒
隣でもぞもぞと蠢くような音が聞こえたと思ったら、すぐさま起床の合図とも言える吐息を漏らす。
大きな伸びと共に出た声は、天井の高い教会の中では一際大きく響いたような気がした。
私は思わず小さな笑みが零れた。
そしてそれは、不穏気味に囁き合う二人も同様だったらしい。

机に向かい合っていた姿勢からこちらに向き直り、
 「おはよう、二人とも。起こしちゃったかしら?」
と、笑顔で挨拶をしてきた。
 「おはようござ、くぁー……」
またしても大きな欠伸。
寝惚け眼を擦りながらの挨拶は、途中で途切れてしまう。

―――――――

備え付けの料理鍋などを使い、朝食を終える。
石机に向かっていたエルフの青年と乙女も、会話を一区切りして私達の元へと歩み寄る。
柔らかき二人
 「それじゃあ僕達はこれで失礼します」
青年が私達に頭を下げると、隣の乙女も同じく頭を下げた。
数秒の間、事態の対処に悩み固まってしまう。
エルフとは思えないほどの低い物腰に驚いたのも事実であったが、何よりなんと挨拶すべきか。
適切な言葉が思いつかなかったのだ。
 『はい。貴方がたも、どうかお気を付けて』
当たり障りのない言葉を何とかして舌から紡ぎ出すと、
 「ごめんなさいね。私達……サルモールの者達が居るから宿を利用出来なかったのでしょう?」
苦笑しながら、乙女が答える。

エルフとの別れ
ベリー・ベリーは首を傾げて返したが、私は思わず呆然としてしまう。
その様子を見てか、青年も困ったかのように眉を八の字にさせていた。
 「いいのよ。何も答えないのが正解」
自嘲するかのように鼻で笑うと、二人のエルフは扉のほうへと足を向けた。
 「さよーならぁー」
ベリー・ベリーが笑顔で手を振って見送ると、青年と乙女は顔を見合わせる。
しばらくして、優しい微笑を浮かべながら私達の方へと向き直った。

乙女の名はセレスティア
 「さようなら、お嬢ちゃん。私の名前は『セレスティア』。また何処かで会えるといいわね」
セレスティア、と名乗った乙女に続き、隣の青年もまた、
青年の名はエルヴァンス
 「僕の名前は『エルヴァンス』です。お二人の旅路に、キナレスの祝福がありますように」
同様に名を名乗り、そして教会を後にした。

―――――――

小鳥の囀りと小川の清流の合唱は、心が休まる音色。
優しい風に揺られし木々に合わせて、地に降りし影が躍る。
爽やかな出発
外は、快晴。
どこまでも青い空が続いている。
昨日の雨はすっかり上がり、からりとした爽やかな太陽が照っていた。
 「っきし」
ベリー・ベリーのクシャミが背後から聞こえた。
後方へ顔を向け見やると、少女は照れ臭そうに微笑んでごまかす。
風にくすぐられたのか、すんすんと鼻を鳴らしている様子は微笑ましい。
私は思わず頬が綻んだ。

教会の立っていた台地を降り、街道を進む。
イリナルタ湖から流れる清流が沿う路は、水を求めるヘラジカや野ウサギ、そして狼と様々な野生動物が生息する。
通りすがりにそれらと挨拶を交わし、清しい太陽の下を歩く。
街道をしばらく進むと、やがて道の作りが緩やかな下り道へと変わった。
澄みし空気は遠景も澄ます
 『見えるかな? あそこがホワイトランだよ』
街道に自生する木の合間から覗く、雄雄しい城を指差す。
 「わぁー、すごいすごい!」
私が示した先を見つめる瞳は、まぶしいくらいに輝いている。
 『大きいから遠くに見えるかも知れないけど、もうすぐ着くよ』
 「なんだかドキドキしてきましたよぉ~……」
焦らない焦らない、と小さな声で呟きながら、己の胸に手を当てているベリー・ベリー。
心を急かすかのような言葉を掛けてしまったが、思いのほか冷静なようだ。

和やかな
 「あっ、カニさん」
街道に沿う川は下るに従い、やがては小さな滝となり、うねる。
その川を遡上するサケを狙って、マッドクラブは根城を構えるのだが、この生物は意外に凶暴。
近付くものに対しては人間であれトロールであれ熊であれ、構わずにその鋏を振るうのだ。
今こうして横を通り過ぎてもマッドクラブが鎮まっているのは、やはりベリー・ベリーのお陰だろう。

川の縁に脚を埋めようと身体を震わすその様は、実に和やかなものだった。

―――――

緩やかな下りの街道が終わり、道は平坦なものへと変わる。
ホワイトランへと続く街道には、スカイリムで最高の味を誇るハチミツ酒、『ホニングブリュー』と言うメーカーの醸造所が並ぶ。
それに伴ってジャガイモやリーキ、キャベツなどの野菜を育てている『ペラジア農園』が構えられている。
こちらの街道は、それだけのはずである。
避難民
少なくとも、以前はそうであった。
そうであったのだが、今はそれらの向かい側……つまりは、川の畔に幾つかのキャンプが設置されている。
見た所、ホワイトランの住人とは思えないし、農園や醸造所の関係者とも思えない。
旅の隊商とも違うように見える。
そこに居る者達の様子を見る限りでは、望んで此処に座している訳でもなさそうだ。
とすると、考えられる事は一つ。

この者たちは『難民』だ。

内戦による影響で住処を追われ、望まぬ生活を強いられているのだろう。
スカイリムの勢力に於いて、中立の意向を持つホワイトランならば確かに安全かも知れない。
だからと言って『この街に住まわせて下さい』と懇願した所で、安易に居を構えられる訳でもない。
中立都市は避難所では無いのだ。

歳不相応のたそがれる背中の少年を見て、遣る瀬ない感情が胸に飛来する。

私は深呼吸を一つし、足を進める。
そして、また再び―――
再来、ホワイトラン
ホワイトランに、到着した。

――――こうしてこの街に訪れるのは何度目だろうか?

ムダールやショウエイなど、印象深い皆々との出会いの思い出が馳せるのも勿論だが、そうでなくとも冒険者である私は、同じ街に何度も来訪するものだ。
その時々によって、変わらないもの、変わったものを発見しては、小さな感動を得ていたものだったが。
幸いにもムクロは無い
ホワイトランの街を守護するかのように囲む、古き良き味のある壁。
そこには侵入者を拒むかのように木の柵が大量に拵えられており、そしてその侵入者の末路を示すかのような鉄の籠まで吊り下げられている。
その中に屍が備わっていないのは幸いだったが、この街でもこういった血生臭い代物が置かれた事に対し、いぶせし風に心が撫でられる気がした。
 「なんだか、立派なところですねぇ」
周囲を見回しながら、ベリー・ベリーが呟く。
 『ここは周りに何も無いからね。大昔の人達が、安全に暮らすために高い壁を作ったんだよ』
平野だから、と言う意味合いを噛み砕いての説明であったが、
 「あぁ~、そうですねぇ。これなら泥棒とかが入ってこれないですものねぇ~」
この少女なりに解釈し、通じたようだった。

古き立派な門を越える
正門へ続く曲がりくねった緩やかな勾配を上っていく途中、明らかに戦に備えし物資の山々が目に止まる。
これ以上、その事に気をやっては心が滅入ってしまうので、余計な事は考えないようにした。
 「最近は我々も忙しいんだ。街の中で面倒は起こすなよ」
正門の鍵を開ける衛兵から釘を刺されるも、声を返すことなく肯いて応える。

重厚さを誇示するかのように、軋ませながら門はゆっくりと開いてゆく。
私とベリー・ベリーは衛兵に軽く会釈し、そして街の中へと入っていった。


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