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 ロリクステッドの淡き思い出。
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私とムダールが村に踏み入れるや否や、村に配属されているであろう衛兵が声を掛けてくる。
 「レッドガードの旅人に、カジートも一緒か。いいか、変な気を起こすなよ」
敵意に満ちた眼差しが私達を射抜く。
 「この村に牢はない。言葉の意味は解るだろうな?」
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謂れの無い疑いを掛けられているようで不快だったが、これも衛兵の仕事なのだと思えば、心中は察する。
こういった街道に面する村と言うのは、冒険者や隊商に扮した山賊達の被害に遭いやすいのだ。
私たちが納得した様子で肯くと、衛兵は歩いて行った。

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空にはセクンダの月が赤く彩られ、時が夜へと進んでいる事を教える。
 「なあ友よ、今日はもう遅い。この村で休まないか?」
ムダールからの言葉に、私は肯いて応えた。

『ロリクステッド』の宿屋、『フロストフルーツ』。
私にとっては懐かしさと、そして少々の切なさを感じさせる場所である。
思わず、一瞬足が止まるが――
ムダールの呼びかけによって絆され、私達は宿屋の扉を開けた。

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 「おや、アンタかい。懐かしいねえ」
宿屋の主人の、『ムラルキ』は私の顔を見るなり破顔した。
彼は私の事を覚えていてくれていたようだ。
私は頭を一つ下げ、世間話もそこそこに宿泊したい旨を伝える。
すると――
 「ああ、いいとも。特別にお代はまけとくよ。勿論お連れさんの分もな」
と言ってまた破顔し、部屋へと案内してくれた。



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陽もすっかり落ち、夜半も充分と言った頃、ムダールが口を開いた。
 「こんなに親切にして貰えるとは驚きだ、友よ。お前は顔が広いなあ」
夕餉を終えて上機嫌なのか、上擦った声で語りかけてくる。
 『昔、この村にしばらく滞在した事があってね。少しだけ馴染みがあるんだよ』
私の返した言葉に興味を持ったらしく、
 「ほう! ここでケガでもしたのか?」
と、ムダールは身を乗り出してきた。
 『話せば長くなるけど、聞くかい?』

私の言葉に、彼は耳を立たせて聞き入る体勢となった。



   ―――――

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 ――ある時。
旅の途中で寄ったこの村、『ロリクステッド』。
私は今夜の様に『フロストフルーツ』で宿を取り、食事を終え酒も入ってか、気分が良かった。
気を良くした私は得意のリュートを弾いて、酒の共にと曲を披露していた。

 「……素敵な曲ね」

曲を弾く私の傍らに、いつの間にか一人の女性が立っていた。

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滑らかで艶やかな銀色の髪に、宝石よりも美しい琥珀の双眸。
健康的な小麦色の肌に、白樺の幹の様にすらりと伸びる体躯。
嫣然として、利発な眼差し。

私の指は一瞬……弦を弾くのを忘れて、彼女の姿に目を奪われてしまった。




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彼女の名前は『ヴァルネラ』と言い、ノルドとエルフの混血の生まれと語った。
寂れた村と言っては失礼だが、こんな場所に素敵で華やかな女性が居るとは
夢にも思わず、私はついもう一日宿を取ってしまった。
無論、彼女と親しくなりたいと思ったから。

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だが……悲しいかな、躍る胸とは正反対に私の身体は、彼女を前にすると
岩のように硬直し、緊張から碌に会話も出来ない状態に陥ってしまった。
 「男なら、もっとしゃんとしなさい? お互い退屈でしょう?」
滲み出る大人の余裕が、また私の心臓を苛む。
背中に湿った汗が噴出し、どうにもならなくなってしまっていたが――

 「怖がらなくていいのよ。無理に格好付けるより、正直なままが好きだわ」

――そう言って微笑む彼女の顔は、とても優しかった。

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私が『ロリクステッド』で過ごしてから、しばらくして。
ある日、ヴァルネラは私にこう語った。
 「私はね、大学に行こうと思うの。魔法の研究と、修行のために」
大学とはすなわち、『ウィンターホールド大学』のことを指す。
エルフの血が流れている以上、自身の才能の為にも、やはり魔法へと興味が向くのは当然の事。
 「村の皆は大反対。特に男達はね。美人が居なくなっちゃうからでしょうね」
ヴァルネラは子供のようにくすくすと笑う。

そして――不意に、真顔に戻り。
 「……ねえ。貴方は、どう……思う?」
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 「大学に……行かないほうが、いいかしら?」
ヴァルネラからの言葉に……返す言葉が何も思い浮かばなかった。
風来者の私は、彼女にいくら焦がれようとも決して掴めぬ空華なのだから。
 「男なら……もっと、しゃんとしなさい」

この時の彼女の囁く様な言葉は、今でも耳の奥で木霊して離れない。


……次の日。
私はヴァルネラから大学へ行く決心がついた事を聞かされた。
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 「今晩、ちょっと付き合ってくれる?」
物悲しさと、僅かに寂しさを帯びた声音による問いかけ。
私には、拒む術が無かった。


そして、その夜。
ヴァルネラは私の手を引き、とある場所へ案内してくれた。
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 「この場所からは星がよく見えるの。私のお気に入りの場所よ」

背中に感じる冷たい岩の感触に、どこまでも続く星空。
赤いマッサーに掛かる青いオーロラがまた、一層幻想的で美しかった。

 『美しい……』
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思わず口から零れた私の言葉に彼女はすかさず、
 「……どっち?」
と、悪戯めいて聞いてくるのであった。


そしてついに彼女が『ロリクステッド』を去る当日。
ヴァルネラは宿屋に居る私の前に現れ、リュートを弾く様に強請った。
 「あの晩聞かせてくれた曲を弾いて」
私には断る理由など、何一つ無い。

言われるがままに、リュートを弾き始めると――彼女は踊りだした。
自らに掛かった呪いを解くための儀式であり、そして自らの新たな旅立ちを鼓舞するための、踊りなのだと言う。
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艶美なドレスに身を包んだヴァルネラの踊りは、とても美しかった。

星空よりも。
月よりも。
オーロラよりも……。





   ―――――


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 『そして次の日、私は村を出て旅を再開した。短くも楽しい日々だったよ』
無言で聞き入ってくれていたムダールも暫らく目を伏せ、それから、
 「良き日々だったんだな」
顔を上げ私の方を見据えて呟いた。
 「明日に差し支えてもいけない。友よ、そろそろ休まないか?」
ムダールの言葉に私は無言で肯き、従う事にした。



   ―――――


    その晩、私は夢を見た。

   ―――――

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   あの日の星と、月と、オーロラの。

     そして。

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    囁きの後一瞬見せた、物憂げな視線で私を見つめるヴァルネラの。



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