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 蛇と鼠と蛙の巡りあわせ。
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まず感じたのは、そう。
排水による独特の臭いだった。

加えて曇天による薄暗さが、この街を相応しく彩っているかのような。
リフテンに入り
……上手く言い表す事が出来ないが、晴れていない事に関して煩わしさを感じられないとでも言うべきか。
こうあるべきなのが、さも当然であると思わせるような。
何とも不思議な感覚に陥る。

ネズミが走る
徐(おもむろ)に道を駆け回る小さな影。
その正体は小さな灰色の鼠。
スカイリムでネズミと言えば『スキーヴァー』で、我々が見かけるものとしたら基本的に成体となったモノであり、手の平に収まってしまうような幼少期のものはそうそう見かけない。
しかも、それが堂々と街の中を走っているのであるから、驚きを隠し切れなかった。

 「どうやらリフテンは初めてみたいだな」

瞠若する私の後方から掛かる、スネークの声。
 「以前はもう少しマシだったんだがな……だが、ふとした事を切っ掛けにこの街は変わった」
何処か寂しさを匂わせる声音と共に語る其れは、憂いの色も交えられていた。
スネークの方を振り返り、その心意を問う視線を送る。
クレーンのある広場
 「単純な話だ。街を治める者が変わった。ただ、それだけだ」

街を治めるもの……首長の事だ。
確かにこの街の立地を思えば、もっと素晴らしい街へと発展する事は容易だろう。
街道に茂る豊かな植物を思えば、ここの土壌による穀物の安定生産もそう難しくないはずだ。
生きる事に不可欠な水は、この上ない程に有る。
それに伴う、水産物も見込める。
そしてここは『ファルクリース』の街と同様、スカイリムから『シロディール』への行き来をするには通り道となる立地。
旅人、商人、冒険者と様々な人間が交流する場所にもなるだろう。

水も潤沢、豊かな緑も生い茂り、そしてシロディールへの国境も近い。

好条件はこれだけ揃っているにも関わらず、荒廃とも感じ取れるこの空気は……恐らく、意図的に『そう』されているのだろう。
つまりは、街を治める者にとっては『こうである』方が好都合なのだ。
胸の中に遣る瀬無さが去来してくる。

マーラ聖堂
ふと目をやると、円状の広場の外周に聖堂が見える。
レリーフからして、愛を司る豊穣神『マーラ』の聖堂であろうが……この退廃的な空気に満ちた街では、何処か薄ら寒い。
意図せぬ痛烈な皮肉にすら感じられる。

 「まぁ流れ者のあんた等には関係のないことさ。さあ、まずは腹ごしらえでもするか?」
スネークはかく語る
スネークの言葉に、私はベリー・ベリーの方を見やる。
その視線に対し、頬を緩ませて答えた。
 『ええ、何処か落ち着ける所で是非』
私はスネークの方へと向き直り、ベリー・ベリーが行なったのと同様に頬を緩ませて返す。
 「よし来た。この広場を突っ切った先に『ビー・アンド・バルブ』という宿屋があるから、そこで何か腹に入れよう」
私達はスネークに促されるまま、その後に続く。

中央に井戸を携えた円形の広場、いや市場。
宝飾品、防具屋、雑貨屋と多様に揃っている。
その中で、とある屋台にて立つ一人の男が、こちらへと怪訝な瞳を向けている事に気付いた。
 「いまさら何をしに戻ってきたんだ、スネーク」
通りすがりのやり取り
屋台に立つ男がこちらへと言葉を投げてくる。
その声音には明らかな憤慨、痛恨と言った敵意が混じったものだった。
 「俺だって来たくて来た訳じゃないんでな。それに俺と話す舌は持たんと言ったのは……ブリニョルフ、お前のほうだっただろう? なのにわざわざ話しかけてくるとはご苦労なことだ」
スネークの言葉には特に感情らしい感情は込められていない。
ただ一言、『俺に関わるな』と言いたげな様子であったのは確かだった。
それに対しブリニョルフと呼ばれた男は実に奇妙な表情を浮かべている。
 「アンタの影響力はまだ残ってるが、今この街は『メイビン』の街……いや、彼女そのものだ。迂闊な事はしないほうがいい」
鬼胎を抱いたかのような目で尚も続け、
 「昔のよしみだから警告してやったんだ。こちらの善意に感謝の一つでもして欲しいもんだがな」
と吐き捨てるように言い放つ。
スネークはその言葉に返答せず、顔を僅かに俯かせ、ただ「フフッ」と吐息と共に、わざとらしく唇の端を釣り上げていた。
私の怪訝な視線に気付いてか、一拍間を置いてこちらに振り返ると、
 「すまんな、お二人さん。ちょっとした知り合いとの他愛も無い会話さ。さぁ行こう」
ビー・アンド・バルブ
と、我々を促した。

――――

軽快な音と共に宿の戸が押し開かれる。
 「これは天啓であり、そして大いなる試練でもある。人々よ、あなた方は一度でも彼に祈りを捧げただろうか?」
司祭と店主
耳に飛び込んできたのは、来訪を歓迎する店主の声でなく、宿の客の酒焼けした濁声(だみごえ)でもなく、張りのある凛とした声だった。
 「如何に彼がアカトシュに祝福されし者であったとしても、皆からの敬愛なくしては他の神々からの祝福は得られない。そう、そして今現在が正にその得られなかった、という証なのだ」
熱の込められた声に乗って流暢に動く舌。
腹と喉より出でるそれは、語り慣れている人間のものだった。
 「毎日毎日いい加減にしてくれ。神や英雄に祈っても、空から肉や麦は降って来ないんだ。あんただってそれらで腹を満たさなければ、こうやって熱弁を揮えないだろう?」
店主と思われるアルゴニアンの男性による、静かな一喝。
 「帰ってくれ。その豊穣とやらが通じる場所にな」
そのやり取りを、ちらちらと横目でみやる店内の客。
訝しむ様子が無い所を見ると、恐らく見慣れた光景なのだろう。
公衆の場で無ければ舌打ちを鳴らしたであろう険しい表情を、司祭は浮かべている。
だが反論の一つもせずに背を向け、自ら店の外へと出ていった。

ふぅ、と溜息にも似た吐息をこぼし、店主は我々の方へと向き直ると、
 「いらっしゃい、ビー・アンド・バ……」
と来客への決まり文句を放つ前に、その場で硬直する。
 「久しぶりだな、『タレン』」
スネークは気さくに声を掛ける。
しかし、タレンと呼ばれたアルゴニアンの男性は明らかな困惑と動揺の色を顔に浮かべていた。
 「あ、あぁ、い、いらっしゃい」
顔を背けながら、当たり障りの無い言葉を何とか捻り出した様子で応える。
それ以上の言葉は交わしたくない、避けていると言うのがありありと感じられた。

 「いらっしゃい、スネーク。久しぶりじゃない」

ざらついたかのような独自の声音が我々の方へ届けられたのは、カウンターから。
アルゴニアンの女性
その声が聞こえた方へと足を向ける。
 「ああ、久しぶりだな、『キーラバ』。元気そうで何よりだ」
スネークからの挨拶にカラカラと軽快な声で笑うのは、キーラバと呼ばれたアルゴニアンの女性。
 「後ろのお二人は新しい『お仲間』かしら?」
値踏みするかのような視線が私とベリー・ベリーに注がれるが、スネークはそれを止めさせるかのように、
 「ちょっとした知り合いさ。この二人はな」
と、簡素な言葉で閉める。
 「ふぅん。まぁいいわ。『私は』お客さんなら誰でも大歓迎よ。で、注文は?」
キーラバは先ほどの友人に対して行なった気取りの無い声音から、営業用の固い声音へと戻す。
するとスネークは声を潜め、
 「『蛙』だ」
と呟いた。
カウンターで会話を交わす二人から、表情が消えている。
 「……スネーク、それは流石に無理ね。今のこの街では『爬虫類』は取り扱い禁止なのよ。本当だったら『蛇』もね」
キーラバからの返答に対して不満な様子を表すかのように首をわざとらしく回し、言い直す。
 「そうか……。ならワインでいい」
 「ええ。そちらのお二人は?」
尋ね人の名を
スネークがカウンターから数歩離れると、私とベリー・ベリーはカウンターへと進み出る。
 『私もワインを。それから、この子に温かいシチューを。それと……』
うんうんと頷きながら注文を聞き入るキーラバ。
 『アリア・セレールと言う女性のウィザードを探しているのですが……ご存じないですか? リフテンに居ると聞いてこの街に来たのですが』
私の質問に対し、キーラバは僅かに首を傾げて考え込む様子を見せる。
刹那の思案の時から戻ってか、こちらを向き直り、

 「残念だけど……聞いた事が無いわ」

と決まりが悪そうに、答えた。


――――――

 「まいったな。思っていた以上に俺は嫌われていたらしい」
カップに口を付けながら呟いたのは、スネークだった。
いったん休憩
私はその言葉に対し、無言で首を横に振って答える。
ベリー・ベリーは無言で目の前のシチューを食べていた。

シャから『リフテンに絶対居る』、と言われた手前、キーラバのあの言葉には少なからず落胆したはずだ。
言葉にこそ出さないが、恐らくベリーベリーは今、私以上の思慮を巡らせているだろう。

シャの声、表情からして、アリア・セレールに関しての情報は偽りのものでは無い。
なにより彼女は、アリア・セレールに携わる者であって、ベリー・ベリーの事も瞬時に理解した程の者だ。
そんなシャが、取り繕う為の嘘や、作り話などするはずもない。
そして……キーラバの放った言葉にも、怪訝に思うような色は含まれていなかった。
とすれば―――

提案
 「俺はまた外で聞き込みをしようと思う。嫌でないならアンタ等の尋ね人について一緒に聞いて回るのも良いと思うが、どうする?」
私はスネークの提案に、力強く頷いて返した。

―――考えられる要素としては。
シャは、アリア・セレールが『リフテンに向かった』と行き先を知っていただけである。
リフテンの『街』に居ると言う確証は無い。
もしかしたら『街に入った』が、宿にも寄らずに出ていったのか。
それとも『街に入らず』に、また何処かに行ってしまったのか。
前者の場合ならば、街の住民や塀の外の者達に聞き込みをするという方法が良案と思える。
後者だった場合は……あまり考えたくないが、当てどない道を進む事となるだろう。

ベリー・ベリーの方を見やると、私の視線に気付いたのか一旦手を止め、微笑んだ。
『シチューが美味しい』と言う意味で、そう返したのだろう。
私はただ只管に、前者である事を祈りながらカップを傾けた。

――――――

腹ごしらえを終えた私達は、スネークと共に街での聞きこみを開始した。

物乞いに聞けど

物乞いに、商人に、街の住民に。
衛兵達はスネークを見るなり畏怖の感情を露にしたが、それでも聞き込みの成果はあがらない。
それ以上の感情を以って御されているのか、『蛙』の事を尋ねても口を噤む一方だった。

雑多

そして同時に『アリア・セレール』の事についても尋ねてが……返って来る答えはどれも同じだった。
聞いた事が無い、と。

街の喧騒に混じった乾いたポプラの葉の音が、妙に煩わしく感じられる。
侭ならない事への苛立ちが無意識に募っているからだ。
そしてそれはスネークも同じらしく、街を一周して聞き込みを終えた時に、わざとらしいまでに深く大きい溜息をついた。


手詰まり
 「困った。まさか『メイビン』の影響力がここまで強くなっているとは……」
広場から『下』に作られし貧民達が暮らす木製の通路で、スネークは呟く。
メイビン、と言うのは現在この街を治める首長の名前らしく、スネークの聞き込みの際に住人達が時折口にしていた。
 「俺の見込みが甘かったらしい。どうやら『潜入』して探し回るしかなさそうだな……」
その言い放った後、私の顔を一瞥し、腕を組んで黙考に浸る。
スネークの瞳に映っていた慙愧、遺憾、無念の色。
 「役に立てなくて済まなかった。どうやらここで」
お別れだ、と続けようとした言葉を遮ったのは、

 「ねずみさん?」

少女からのあどけない声だった。
 「スネークだ」
後方を見やると、先ほどまで足場の畔に腰掛けて足を遊ばせていたベリー・ベリーの姿がない。
 「カエルさんの場所、しってるってネズミさんが言ってますよぉ?」
 「何を言ってるんだか知らんが、俺は……」
鼠の囁き
スネークが若干苛立ちを交えた声音でベリー・ベリーに言葉を放たんとせん時、ふと。
小さなネズミが二匹、その眼前にて甲高い鳴き声で何かを訴えている。
 「ふんふん……ふんふん?」
首を上下に揺らすネズミに合わせて、ベリー・ベリーは頷く。
情報提供者はなんと
 「そうなんですかぁ~」
きゅう、と言うネズミの甲高い鳴き声が、まるで返答のような錯覚を生む。
いや……この少女の事を考えれば、錯覚ではないのだろう。
そのやり取りを見てスネークは呆けたままであった。
しばらくしてようやく、
 「……この子は一体何者なんだ?」
と、私に答えを求めてきた。
 『……ただの、女の子ですよ』
さも何事も無いかのように言い放った私に対し、釈然としない態度であったが、スネークはただ腕を組んで傍観するだけだった。

――――

ベリー・ベリーの言葉に従い、私とスネークは一旦街の外へと移動した。
 「あれですかねぇ?」
一旦街の外へ
その言葉が指した場所には、排水口。
筒状で木製の柵で組まれただけの、一見ただの排水口だ。
私達はベリー・ベリーの言葉のままに、近くへと歩み寄る。

 「これは……簡単に取り外せる仕組みになってるみたいだ」
水路
スネークが木製の柵に触れると、それはいとも容易く外す事が出来た。
 「俺が街に居た頃にはこんなものは無かったな」
柵を取り外した排水口の先は暗くてよく見えないが、結構な奥行きがあるように感じられる。
 「……で、『蛙』はこの先に居ると?」
スネークから送られる怪訝の含んだ声と視線。
ベリー・ベリーはそれらを感じ取っていないのか、はたまた意味を理解していないのか解らないが、
 「はいー、ネズミさんは言ってました。『カエル』って呼ばれた人が居るってぇ」
と、素直な言葉で返す。
するとスネークの瞳の色が凛として丹心に満ちたものに変わる。
 「よし解った。早速向かうとしよう」
そして軽快な跳躍で、排水口の淵へと飛び乗った。

――――

 「当然だが、中はかなり暗いな。足元に気を付けろ」
暗く狭く
しっかりとした足取りで流れる水の上を進むスネーク。
ベリー・ベリーは足取りが覚束ないので、私はその手を引く。
 『灯りを点けましょう』
 「何から何まで済まないな」

薄暗い通路が、カンテラの灯火に照らされる。
スキーヴァーの横を過ぎる
滴る水滴の音が不気味に響き、人間の子供よりも大きな体躯の獣……スキーヴァー達の呼吸音が残響の如く絶え間ない。

スネークは私達にこう言った。
 ―――世話になったな。ここから先は俺独りで行く。
それに対し言葉を返したのは、ベリー・ベリーだった。
 ―――あのぅ、私達も一緒にっていうのはダメですかぁ?
同行を願い出た少女にスネークは驚きを隠せなかった。
最初は反対こそしたものの、一向に引かないベリー・ベリーに押し負けてか渋々了承する。

そこからまた進み
スネークからは『何故止めないんだ?』と言いたげな、若干恨めしい視線を送られたが……。
ベリー・ベリーが、スネークに同行を願い出た理由はただ一つ。

スネークだけでここを進む事となれば、ネズミの親であろうスキーヴァーが、彼を侵入者と認識し襲いかかる。
そして降りかかった火の粉を払うべく、スネークは容易く其れを始末するだろう。
承諾したスネークに、ベリー・ベリーはこう言った。
 ―――それじゃあ、中に住んでるネズミさんには手を出さないでくださいねぇ。
と。
その言葉の意味を理解できたのは、人の気配を感じてもなお敵意を示さないスキーヴァーを目の当たりにした時だろう。

 『これは……壁が、無い?』
見えるが見えない壁
道なりに進んでいった先、低くなった天井に頭をぶつけないよう注意深く歩いていると。
そこは牢獄。
そしてそこの一部の壁が崩されたかのようになっていた。
 「幻惑魔法の一種だ。壁が壊されていつでも脱獄できるようになっているが、向こうからはあたかも壁が存在するかのように見える」
押し殺した声
スネークは声を押し殺しながら我々に、眼前の状況を説明をしてくれる。

向こうからは壁に見えるであろう場所の先、囚人一人には広すぎる空間に、その者は居た。
 「『フロッグ』、俺だ。フロッグ」
のん気
緑色の鱗を持ち、後頭部には対になるようにして真っ直ぐ生えた二本の角。
顎の外側にも幾つかの角を携えたその者は、れっきとしたアルゴニアン。
 「フロッグ、聞こえるか。フロッグ」
更にのん気
 「衛兵さん、オイラのこと呼んだ?」
 「カエルと話す事は無い」
スネークによる、呟くようでありながらも確かな声は、『フロッグ』と言うアルゴニアンの耳に届いたらしいが、肝心の声の主が誰であるか気付いてないようだった。
 「フロッグ、俺だ。スネークだ。助けに来たぞ、フロッグ」
声無き絶叫
スネークによる必死な呼びかけ。
だが……。
 「ん~牢獄のメシは不味いせいか、オイラの頭もちょっとイカれちゃったんかねぇ」
 「フローーーーッグ」

幻聴と判断したのか、フロッグは椅子に腰掛けたまま乾燥したパンを齧り始める。
 「とほほ。シャバが恋しいや」
不満気に口をもそもそとさせているフロッグに痺れを切らしたスネークは、忍び足でゆっくりと近付いてゆく。
隠密
音も無く、静かに静かに。
それでいて確かな足取り。
暗殺者であるかのように気配も遮断し、周囲の気流すら変化を生まない巧みな隠密術。
理由の無い
そして、スネークはおもむろに腕を振りかぶって……。

……一見すれば口にするのも憚られるような、理由のない暴力がフロッグに見舞われている。
目もあてられず
いや、冷静に考えると、ともすれば下手に接触する事で騒動を生む可能性が無きにしもあらずだろう。
そう言う意味では、スネークの判断は正しかったのかも知れない。
無音で行なわれる其れは、ある種の芸術とも表現出来るほど見事な手際だった。

脱出
 「待たせたな、お二人さん。さぁ、ここからおさらばしよう」
程よく伸されたフロッグを引きずりながら、大真面目な声音のスネーク。
 「ぷっ」
その不思議な光景に思わず噴き出したのは、ベリー・ベリーだった。

――――

救出??
まるで喜劇のような脱出。
私達はリフテンの街の外の裏に到着した事によって、救出劇は幕を閉じた。
 「フロッグ、起きろ! 俺だ、スネークだ! もう大丈夫だぞ!」
滑稽とも見えるが
気を失っていたフロッグの身体を揺さぶり、呼びかけるスネーク。
 「う、う~ん……そ、その声は……ボス?」
殴打によって気絶させられたにも関わらず、たったこれだけの呼びかけで意識を取り戻すとは、フロッグと言うアルゴニアンも只者では無いのだろう。
 「あぁ、遅くなって済まなかった」
そして驚く事に、まるで何事も無かったように起き上がる。
 「あれ、オイラ確か牢屋に居て、急に気を失って……なんだか頭がズキズキと痛むなぁ」
 「きっと薬を盛られたんだろう。恐らくは……自殺に見せかけるための昏睡薬か何か」
蛇と蛙
 「うおっ、マジか! あっぶねー死ぬところだった! 助けてくれてありがとう、ボス!」
 「礼には及ばん。お前が居ない『ギルド』は味気ないんでな」
二人はさぞ愉快と言わんばかりか、私達に憚らずに笑い合った。
ここでフロッグに、事の経緯の真実を述べるのはとても無粋な事なのだ。
それは恐らく、ベリー・ベリーも理解したのであろう。
私達はただ無言で、二人のやり取りを見つめていた。

 「ありがとう、お二人さん。お陰で同胞を助けだす事が出来た。感謝してもしきれないくらいだ」
蛇の目的達成
スネークが私達二人に頭を一つ下げる。
 「成り行きとは言え、付き合って貰って本当に済まなかった」
そしてフロッグは渡された蜂蜜酒を豪快にあおる。
 「ゲフッ、ありがとーね」
髄にまで染み入る、と言わんばかりに酒気を含んだ熱い吐息と共に述べられる礼の句。
 「しかし、お二人の探し人……アリア・セレールだったか? 本当にリフテンに居るのか?」
放浪の旅へ
私が胸の内に抱いていた不安を、スネークの口から投げられる。
 「……ネズミさん達も、知らないって言ってましたねぇ」
そしてベリー・ベリーの口からは、何とも切ない事実が述べられる。
 『そう、なのかい』

これは私の推測だがベリー・ベリーは小さなネズミ達に『アリア・セレールを知らないか』と言う旨を最初に尋ねたのだろう。
『知らない』と返されたから、次に『カエル』の事を尋ねてみた。
そうしたら『そっちは知っている』と返された。

 「ん? アリア・セレールって、あのきれーなおねーさんのこと?」
ベリー・ベリーの辛苦なる心中を察して已まない刹那、驚くべきはなんとフロッグ。
蛙からとは意外!
 「し、知ってるんですかぁ!?」
思わず食いついたのは、もちろんベリー・ベリー。
その勢いに気圧されることなく、フロッグは言葉を続ける。
 「知ってるっつーか、まぁ色々あってね。あのすんごいウィザードでしょ?」
 「えぇっと……メガネをかけててぇ!」
 「うん。そいでもってきれーな金髪で」
 「それと、お胸もおっきくて!」
 「うん。ナイスバディだったね」

わぁ、と感嘆の吐息が、ベリー・ベリーの口から零れる。
 「ちょいと地図貸して。そのおねーさんが居るところに印つけてあげるよ」
諾々と私は無心で地図を渡す。
 「……フロッグ」
印を付けようとするフロッグに、スネークから懐疑の視線が送られる。
地図への記載
その眼の意味は恐らく『何故?』だろう。
 「……あ、いやね、リフトの街道でキャンプしてるおねーさんの荷物をかっぱ……もとい拝借しようとしたら、ね??」
 「そんな事だろうと思ったぞ、まったく……」
スネークは大きな溜息を一つ。
それに対し、悪戯を誤魔化す子供のような微笑を浮かべるフロッグ。
 「ま、まぁでも見つかっちゃってさぁ。で、一人でゆっくり出来る所を探してるって言ってたから、お詫びにオイラ達が使ってた『谷』を教えてあげたって寸法なのよ」
呆れて物も言えない、という様子のスネークだったが、
 「だが今回ばかりはその手癖の悪さが功を成したな。よもや悪行が恩人への恩返しに繋がるとは」
と呟き、窃笑をこぼす。
 「へへっ、人生ってなぁ解らないもんだね」

フロッグから地図を返され、私はそれを受け取る。
 『ありがとう、おかげで当てどない放浪をする事なく済みそうだ』
互いの感謝
 「ありがとうございますぅ!」
私達は二人揃って、頭を下げる。
 「お礼を言うのはこっちさ。ありがとう、二人とも! 旅の無事を祈っている!」
スネークから熱い想いの込められた声と共に別離の言葉を受ける。
 「ありがとね、二人とも! この恩は忘れないよ! たぶん」

手を振るスネークとフロッグに別れを告げ、逸る気持ちを胸に私とベリー・ベリーは再び進む。



―――― ベリー・ベリーの旅の終わりも、近い。

私はこの事に、一抹の寂しさを感じた。


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↓↓ フロッグ=イーター ↓↓
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 (このフォロワーは作者様によるブログからのDLになります)

↓↓ 街拡張 (JK's Skyrim ) ↓↓
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↓↓ 街拡張 (Dawn of Riften ) ↓↓
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