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外伝 【そして心は竜によって紡がれる】
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タムリエルにて一番の高さを誇る霊峰に座する寺院、ハイフロスガー。
そこには『シャウト』と呼ばれる、『声』によって発揮される神秘の力を求むる僧侶達が住まう。

だが、そこよりも更に高きに座す、もっとも空に近しい場。
通称、世界のノド。
晴天のもと、眩しき白と澄みし蒼に彩られた地。
そこには、声の道を求める者達に教えを説く。『長』が住まうと言う。
ハイフロスガーまで至る道を踏破出来る者は多々居れども、その『長』に拝謁が叶う者は少ないらしい。

何故ならば、『長』へ至る道には肌を切り裂くほどの冷気と強さを孕んだ烈風が吹きすさんでいるからだ。
だが、決してその道は抜けられないものではない。
実際に、その厳しく険しき道を立派に切り抜け、登り抜いた猛者も存在する。
まず第一に―――その『長』のご尊顔を目にした者は、瞠若するだろう。

何故ならば、その『長』とは、人間ではないからだ。
―――ドラゴン。
全ての生物の頂点に位置する存在。
喰らい、潰し、焼き、凍てつかせ、その暴虐の定めを魂に刻まれた存在。
だが『長』は―――長きに渡る自問自答と瞑想によって、それらを抑える事に成功した。
そして、人間に『声』を説くほどになった。
その双眸にあるべきモノが収まってはいないが、それでも『長』は来訪者を決して見逃さない。
知恵を求める来訪者に対して、気高き父祖の如く言葉を授ける。
ドラゴンへの怒りに震える来訪者に対して、僧侶の如く悟りを説く。
有無を言わさず刃を向けてくる来訪者に対して、その剣と身体を弾き飛ばし、去るように促す。
心静かにして、穏やかなるドラゴン。
『長』とは、そのような存在だった。
だが、そんな『長』でも、注意して欲しい事がある。
それは――――

『長』の足元にあるもの―――

それに触れる事は許されても、持ち出そうとする者には容赦しないのだ。

もしも『長』の目を盗んで失敬しようとせんものならば―――
その者は、取り返しのつかない過ちを犯した事に気付かされるだろう。

大空を舞う赤き羽。
血のように真紅に染まった鱗を携えたドラゴンに何処までも追い駆けられ、全てを焼き尽くされてしまうからだ。

だが――――
『長』への用事を全て済ませた後でも良い。
足元に置かれた『それ』について、尋ねてみると良いだろう。

長話を好む『長』は、嫌な顔一つせずに語ってくれるはずだ。
一つの伝承を。
一人の男の物語を。
地位も名声もない、英雄の物語を。
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終章 【時代の暁】 ■■■ 【あとがき】
お疲れ様ですm(_ _)m
いゃあ、すざましい戦いを見せて貰いました!
同時にラストにいたる感動まで、なんというか止められない止まれない気持ちが、ヒシヒシと伝わって来ます!
<更新頻度がスゲー!(@_@;)>
「英雄になりたいのか!?」って何処か矛盾したセリフをよく耳にするのですが、守る者が対価に値する者ならば、覚悟があるならば、それが自らの幸せに繋がるなら、捨てるだけの意味がある。
ジードさんが自らを投げ打ってまで守り抜いたモノには、本当の価値があるのではないでしょうか?
それは決して世界を揺るがすモノではなく、それこそ片端で静かに語られる物語。
何せ星霜の書にさえ記載されていない出来事。
定命の者が、神とも言える存在を打ち破った瞬間。
明らかに歴史に描かれ語る価値のあるものであるのかもしれません。
それは時ととも風化するかもしれません。
或いは話に帯が付き、何千年と語られていくのかもしれません。