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 スノッリ・フロストフェザーと魔法の船。
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私達三人は、埋葬室の扉を潜る。

アーチ状に作られた短い通路。
そこを抜けると私達は開けた場所に出でる。

扉の先
まず目に付くのは、レバーの置かれた石の台。
そこから広がる左右に分かれた階段。
その先には小さな踊り場が設けられ、また折り返すかのように階段が組まれ、空間を圧迫するかのように居座る石橋へと繋がっている。
今佇んでいる場から見て、左奥には鉄格子。
その先にも道は続いているが、鉄格子をどうにかしない事には進めそうにもない。

鉄格子を開けるには
 「鉄格子を開けるにはこれを引くのでしょうけど、ねぇ……」
 「ほかに仕掛けは無さそうですね」
台座に備わる輪っか状の穴―――これが罠なのは一目瞭然である。

私達はレバーに触れる事なく、階段を昇る。
すると踊り場の壁に、古代ノルドによる暗号の紋章がある事に気付いた。

暗号を解く
それを見たシャコンヌが、対になっている反対側の踊り場へと確認に向かった。
 「こっちにもあるわ。それが先へ進むためのカギみたいね」

上には古代ノルドの仕掛け
通路を進むと、中央に更にもう一つの階段があり、上へと続いている。
天井に近い位置に作られた足場に、古代ノルドの仕掛けの石柱が三本置かれている。
罠を警戒し、私は二人を階段の下で待機させてから調べる。
壁や天井に特別な仕掛けはないようで、圧力式の床が備え付けられている訳でもない。
どうやら純粋な石柱の置き場となっているようだ。

ひとまずは安堵の吐息。

と、その時、大きな物音が木霊する。
階段の踊り場に有った石の棺が開いた、とすぐに解った。
私は剣を抜いて振り返る、が―――

襲い来る死者の群
即座に反応していたシャコンヌとフェンネによって、眠りから覚めたスケルトンとドラウグルは瞬く間に闇へと帰る。
……私は剣を鞘に収め、再び石柱へと向き合った。

 「謎は解けた?」
シャコンヌからの問いかけ。
 『恐らくは』
確証はないが、こうだろうと言う感覚だけは、私の中に有った。
 『レバーの置かれた所にも仕掛けの紋章があったから、その位置が中央の石柱と繋がり……両脇の踊り場の紋章と左右の石柱が繋がっている、と思う』
フェンネがパン、と手を叩き、
 「なるほど、すごい。きっとそうですよ」
と感心する。
その子供のような素直な言葉に私は首を横に振って答える。
 『ただ、確証はないよ。だからレバーは私が操作する。いいかな、リーダー?』
 「悪いわね、助かるわ」

シャコンヌの了承を得た私は、石柱の向きを整え、レバーのあった位置まで戻る。
そしてレバーを引くと……

台座に備わった罠は作動する事も無く、鉄格子は上へと引き上げられていく。
私は手で合図を送り、二人に降りてくるよう促した。


開いた鉄格子の先には
鉄格子の上がった先の通路は短く、すぐにやや急な角度となっている階段が目に飛び込む。
それを昇った先に見えたのは、毛色の異なる大きな黒い石棺。
一際高い場所に置かれたそれは、まるで身分の高い者のために用意された一つの舞台の様にも見えた。

 そして―――その棺の中からゆっくりと起き上がる一つの影。

鋭利な剣と、堅固な黒檀の盾を持った……
眠りから覚めし
一体の、アンデッドだった。

私達を睨む双眸には、生者への嫉妬と憎悪の鈍光が込められ、咆哮と共に歯から舞う白黴と埃が、その眠りの歳月を表わしている。
 「眠りから起こされてカンカンってとこかしら?」
シャコンヌが軽い口調で呟くと、フェンネは
 「あの武具からして、かなり強力なアンデッドではないかと思います! 油断しないで下さい!」
と、己を鼓舞するかのように叫びながら、二本の剣を抜いて突進する。
私も剣を抜き、それに倣った。

戦いの狼煙
真っ先に突進したフェンネが、雄叫びと共に剣を振り下ろす。
しかし、アンデッドが大きく口を開いて咆哮すると、一喝と同時に衝撃波のようなものが放たれる。
 「あうっ!?」
予期せぬ攻撃で返されたフェンネは、その力に圧されて膝が挫け曲がる。
 「そのまま屈んでなさい!」
シャコンヌの怒号にも似た叫びが響くと同時か、フェンネにその剣を叩きつけんとしていたアンデッドの腕が、一筋の閃光と共に制止される。
電撃魔法で牽制の一撃を浴びせたのだ。
即座に私はフェンネの横を掻い潜って、剣を振る。

強力な死者
隙だらけとなったその身体に一太刀浴びせると、左手に持ったランタンを放って剣を両手に持ち直す。
その間にフェンネは体勢を直し、やや後ろに下がって剣を収めて弓を構える。
前衛は私に一任されたのだ。

剣と剣がぶつかり合い、火花が散る。
アンデッドとは思えないほどの膂力…… 力よりも技を得手とするフェンネがこれを受けるのは至難だろう。
彼女が後ろに下がった判断は賢明と言えた。
棺の間は、戦う場にしてはとても狭い。
前衛が入り乱れては同士討ちの事故を招きかねない状況だ。
両手を構えて、隙を見ては魔法を撃つシャコンヌ。
同様に、私の動きに合わせて牽制の矢を放つフェンネ。
全てが合致し、アンデッドの身体には次第に傷が増えていき、その動きも鈍くなってゆく。

如何に強力なアンデッドと言えど、これ程の腕前の者に群がられては流石に立つ瀬も無く――
最後の一撃
永逝の眠りにつく他は、無かった。


 ――私は放り投げたカンテラを拾い上げる。
咄嗟の事だったために結構な勢いで投げたので、傷が付いていないか確認をしたが、幸いにも一部分が僅かに凹んだだけだった。

 「……あなた達と一緒に来て良かった。私一人じゃこいつに勝てたかどうか解らなかったわ」

シャコンヌの言葉は最もだった。
腕に覚えのある三人だったから何事も無く済んだものの、そこいらの傭兵や冒険者では間違いなくこのアンデッドの剣の錆にされていただろう。
いや、腕に覚えがあっても先程の奇怪な『声』によって挫かれては、思うように戦闘する事もできないはずだ。

守護者のような
 「私も同意見です。この場の皆さんと一緒で良かった。まさかこれほど強力な『声の力』を持った相手だとは思いませんでしたし」
フェンネの言葉に、微笑むシャコンヌ。
 「私の目に狂いは無かった、てことね」
埋葬室の主であるアンデッドを無事倒した安堵からか、二人はお互いに賛辞を呈しあう。
無論、その会話の中に私のことも含まれていたかも知れないが、その言葉は耳に入らなかった。
なぜなら、このアンデッドの鎧に刻まれた文字に釘付けになっていたから。
 『……スノッリ・フロストフェザー、と名前が記されている。どうやら彼がエラーミルの日記に記されていた例の人物らしいよ』
 「……なるほど。強いはずね」

となれば、もうそろそろ目的である宝の発見も近いはず。
シャコンヌは棺の側にあった宝箱を開け、中身を確認すると、私達に先に進むよう促す。
たいしたものは入ってなかったようだ。

埋葬室よりすぐ側、五十歩も歩かぬ場にそれは在った。

謎の魂石
奇妙と形容するのに相応しい、紫色の巨大な魂石。
息遣いが聞こえるかのように艶かしく、そして蠱惑的なまでに美しい。
 「不思議な魔力を感じますね。もしかしてこれが」
 「たぶん、ね。スノッリ・フロストフェザーの魂……かしら?」
シャコンヌはそれを恐る恐る触れ、鉱物のように硬い事を確認してから手に持った。

再びスカイリムへ
そして、私達は道なりに進み――薄い鉄で出来た扉を開き、再びスカイリムへと戻った。

  ――――



発見、グリトウェイク

表に出た私達を待ち構えていたのは、商船の如き大きな船。
蔦や苔を纏った船体に、船首にはマンモスの頭部を模した飾りが着けられ、実に奇妙で不気味で……だが、好奇心を擽られる佇まいだった。
シャコンヌはエラーミルの日誌を確認し――
 「これが、グリトウェイクかしら」
舵輪にかかる台
小さな恐れを声音に混ぜ、ぽつりと呟いた。
その隣でフェンネが視線を、とある箇所にやる。
 「舵輪に台座がついて? 付呪師が使うやつとよく似てますね」
 「日記によると、スノッリ・フロストフェザーは魂で船を扱っていたとか。もしかして、ここにさっきの魂石を……?」
シャコンヌが私に魂石を渡す。
渡されたそれを、無言で嵌め込んでみると―― それは吸い込まれるようにして型に嵌り、船が一瞬大きく揺れる。
魔力が迸る
私達三人は、船の胎動というものを肌で感じた。
だが操舵に巻きついた蔓は解かれる事はなく、この船は舵輪が飾りだという事実を教える。
 「中に入ってみましょう」
シャコンヌは船室へと入ってゆくと、私とフェンネもそれに続く。

扉を潜ると、目に飛び込んできたものは思いもよらない、予想だにしない光景だった。

不思議な空間
 『これは……驚いたな。船室の中なのに、植物が育っている』
船室に入ってすぐには下へと続く階段があるが、階段を降りぬ先には茸や草花が自生しているではないか。
立ち呆ける私を、下から呼ぶ二人の声。

形容するならば
 「すごいですね、鍛冶設備も整ってますよ」
階段を降りた先には、溶鉱に使う火場と、何故か住まう家畜。
そして製鉄と仕上げ、加工、研磨などの武器防具の全てを賄える一室も備わっていた。

ここは正しく一つの場
 「こっちは錬金やら付呪やらの素材がたっくさん。まるで万能な家ね」
フェンネが覗く部屋の少し先の通路からシャコンヌの声が聞こえる。
その部屋には魂石、ドゥーマーの部品、薬品類と揃っており、研究に事欠かない設備だ。
 「スノッリ・フロストフェザーによる改装かしらね。すごいわ。もう一層下もあるみたい」

更に下へと続く階段を進み、船の内装のもっとも底である竜骨部分を歩いた先に、今度は昇りの階段。
そこはテーブルにベッド、装備品を入れるための箱などが置いてあり、プライベートな一時も快適に過ごせそうな場であった。
シャコンヌが形容した「家」と言う表現は、まさに言いえて妙。

置かれた地図
 「私室にはスカイリムの地図、か。でもただの地図じゃあないみたいね。なんてったって……」
シャコンヌは人差し指を地図に当てる。
すると――
 「魔法の船、だって言うんだから」
船が動き出した。


しばらく船に揺られ、私達は船室から再び甲板へと場所を移す。
すると、そこには奇妙な一人の男が立っていた。
 「あんた達か。俺とグリトウェイクを起こしたのは」
霊魂の語り部
よっこいせ、と言いながら腰を下ろすのは、紛れもない霊魂。
客人とは言い難きこの物言いからして、この霊魂は恐らくスノッリ・フロストフェザー。
 「あなたがスノッリ・フロストフェザーね?」
 「いかにも。……まったく、あの場所で眠るためにどれだけ苦労したと思ってるんだ」
死者、とは思えないような人間臭い喋り。
 「そうね。こっちもこの船を起こすのに苦労したわ」
 「そりゃあ良かった。俺の最高傑作であるこの船が他人の手に渡っちまうのは悔しいが、あんた達みたいな骨のある連中に使われるなら構わんか」
スノッリ・フロストフェザーは口の端を上げて笑う。
霊魂である以上、表情はうまく読み取れないがそれは間違いない。
つられてシャコンヌも窃笑を溢す。

そして、私とフェンネの方を見やると――

 「……だってさ。どうする? 私としては、あなた達と一緒にこの船で世界を股に掛ける大冒険に出るのも楽しそう、とか思ってるところだけど?」

魅力的な誘いの言葉、にも聞こえるかもしれない。
だが私にとっての冒険というものは、彼女の思い描く冒険とは大きくかけ離れたものとなっているだろう。
パーティーを組む事というのは寄り道であって、私の冒険の本質ではないのだ。
……私は静かに首を横に振る。

 「そっか、ざんねん。まぁ何となく断られるとは思ってたけど、一応ね。聞いてみただけよ」
苦笑にも似たその表情は、どこか寂しそうだった。
 「フェンネ、あなたはどうなの?」
シャコンヌが恐らく初めて彼女の名前を口にしたであろう瞬間。
とうの本人はまるで気にしていないかのように、呆れかえりながら、
 「忘れてるみたいだから言いますけど、私は従士ですからね?」
と、返した。
その言葉に肩を竦めるシャコンヌ。
 「ざーんねん、ふられちゃったかぁ。フェンネ、それじゃあソリチュードまで送ってあげるわ」
え? と思わず聞き返すフェンネ。
 「この船で港まで送ってあげる、って言ってるのよ。ほら、椅子にでも座ってなさいな」
 「あ、はい。あ、あの、ありがとうございます」
地図を眺め
フェンネのたどたどしい礼の言葉に、思わず吹き出すシャコンヌ。
 「それで、あなたはどうするの? 一緒に乗っていく?」
私に視線をやって問う。
 『いや、私はここでいいよ』
 「遠慮することなんてないのに」
 『歩くのが好きなのさ』
またしても吹き出すシャコンヌ。
 「そう。それならいいわ。それじゃあここでお別れね」

また一つの別れ
私は船から降り、振り返る。
 「短い間だったけどありがとう! 楽しかったわよ!」
シャコンヌが手を振りながら別れの言葉を述べる。
 「あの、お元気で! またソリチュードに寄ったらブルーパレスに遊びに来てくださいね!」
フェンネも同様に手を振り、私にいつかの再会をと言葉を投げる。
船が軋む音が響き、私も手を振って別れの挨拶をした。

出航した後も、私は手を振り続けた。
船の姿が完全に見えなくなるその時まで。




 ――天真爛漫で朗らかな、シャコンヌ。

 ――凛とした佇まいの中にも、穏やかな心を持った、フェンネ。

シャコンヌとフェンネ

不思議な巡り合わせでの冒険の旅。
短い間であったが、彼女達との冒険はとても刺激的で、そして心躍る一時であった。



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